映画の話
今日の朝日夕刊に加藤周一氏の「夕陽妄語」が載りました。 加藤氏らしい理路整然とした映画論に共感しました。 映画「ウンベルトD」(1952)を話の糸筋に日常性と非日常性と云う二つの概念を使って映画を四つの類型(タイプ)に 分類し映画史を(さらに表現の歴史)説明しています。 類型1・・日常的世界の追求(私的で形而上的環境) 具体例として「ウンベルトD」のデ・シーカと小津の映画 類型2・・非日常的な環境での非日常的な人物や出来事(架空的環境) ハリウッドの商業映画 類型3・・日常的世界の中に突然あらわれる非日常性(サスペンス的環境) ヒッチコックの映画 類型4・・非日常的な状況の中での日常性(宗教的な超越的日常環境?) 黒沢の「生きる」の子供の遊び場 ところで、加藤氏の次の文章に注目しました。 「映画はその初めから現実の記録と、空想的な映像の創出という二面をもっていた。(リュミエルーとメリエス)」 何故かといえば、映画の話のコーナで紹介している最近見た「狩人の夜」は映画のこの両面を効果的に使用しているからです。 それが成功しているかどうかは,まだ判らないのですが? 最後に、加藤氏は「ウンベルトD」を戦後イタリアのネオ・リアリズムの極地であり映画史への決定的な貢献の一つである。 と言い切っています。
( 02/01/23 )