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わがメーリング・リストからの引用 (16)

以下の文章はこのML(http://www.emaga.com/info/7777.html)を発行されている”竹山 徹朗”氏の最新号の全文です。
加藤周一の講演会の記事へのリンクもあり内容的に充実して有益と思っています。
わが国の行く末を考える上で、少しは参考になると私自身は思っています。



◆◇今号の目次◇◆


【投稿紹介】
▼「イラクの今とこれから」〜ロンドン大学の公開講義から

【めでぃあ・オフノート】
▼テロか、レジスタンスか。

【転載】
▼神浦元彰(軍事アナリスト)の「J−RCOM」
羨望ではなく、尊敬を


        ◆◇     ◇◆


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【投稿紹介】

▼イギリス在住の女性読者から、ロンドン大学経済政治学院で
行われた公開講義(2月16日)のもようを投稿して頂いた。
イラクの現状についてのありがたいことである。ロンドン大学
の公開講義なんて、なかなか聞けるもんではないですゾ。ぼく
は聞いてもわからんだろうけど(T_T)。


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こんにちは。ご無沙汰しております。昨年、ロンドンの反ブッ
シュデモの時にメールさせていただいたMYと申します。いつ
もメールマガジン楽しく拝読しております。

今日、大学で昨日イラクから帰国したばかりの政治アナリスト
(クリスピン・ホース、シンクタンクユーラシアグループの中
東局長)の講演があり、イラクの現状について英米の視点から
聞くことができたので紹介させていただきます。

小泉首相は国際貢献といっていますが、イラク復興の展望は暗
そうです。

ますます混沌とするイラクに自衛隊がいってどうなるのか。。
不安です。

3月20日のロンドンのデモがあるらしいのでまたその辺も見
てきてお知らせできればと思います。

公開講義の情報ソースの方の勤務先はシンクタンクと書きまし
たが、(私も講演に行くまで全然知りませんでした。^^;)
政治リサーチ&コンサルティング会社で、主に欧米企業相手に
各地域の政治経済情勢をリサーチして投資リスクなどを調べる
会社みたいです。
http://www.eurasiagroup.net/
そこの中東アフリカ局長の方です。

講演者の氏名の日本語での公式名称がわからなかったので、英
語表記も記しておきます。

(Crispin Hawes, Director of the Middle East and
African
Practice at Eurasia Group)

私のつたないメールでも何かのお役に立てれば幸いです。これ
からも読み応えのあるメールマガジンを楽しみにしています。


●−−−−イラク占領1年目〜今イラクはどうなっているのか

<政治>
昨年8月から現在に至るまで、政治のシステム及び統治機構(
国会、裁判所、行政)を作り直すことに尽力してきたが、あま
り成果はでていない。2005年の12月に初の国民選挙をす
る予定だ。おそらくシーア派の候補者が大統領になるだろう。
多民族国家のため、政府は少数民族の意思を反映できる連邦国
家になるだろう。

◇問題点
行政機関:現地の行政官の育成が遅れているため、役所を再編
成することができない。

立法機関: 他民族国家のため、大統領が選出されたとしても
多数派民族であるシーア派の意思ばかりが反映され、反発を招
くおそれがある。どうやって少数民族の権利を保障するかが課
題だ。

シーア派(約60%)、スンニ派(約20%)、クルド人(約
17%)の国会内での選出比率をどうするかでもめている。ま
た、イラク社会では伝統的にいくつかの有力な一族が実権を握
っているため、真の民主主義が成り立つかどうかはあやしい。

司法機関:法をアラブ語で作っているため、解釈をめぐって欧
米と現地の役人の間で意見の違いがあったり言葉が違うのをい
いことに情報操作をする役人もいて、作業は難航している。

統治機構:CPAに派遣されているアメリカの役人は2、3ヶ
月の任期で来ている人が多いため、長期的見通しをもった政策
を持っていない。

<経済>
復興事業に多額の費用をつぎ込んでいるが(日本の経済支援額
が群を抜いている)、米大手企業が独占契約しているため、現
地の経済活性化につながらない。米企業は現地の人々を雇用し
ているが、賃金はフセイン政権下と変わらないため消費文化も
生まれない。一方、米企業の下請けを担った一部の現地人が小
金持ちになりイラク人の間で経済格差が生まれてきている。

イラク経済はフセイン政権時の石油産業への過剰な依存と中央
集権化の為、民間企業が育ちにくく、景気回復が難しい。また
、法が整備されていないため内外からの投資も少ない。経済の
多角化とインフラ整備が当面の課題である。

<生活>
莫大な資金投入にも関わらず日常必需品及び水と電気が特に不
足している。

<安全>
アラブ地域統治の経験があるイギリス軍の多い南部地域は比較
的安全である。しかし、北部と首都近郊、アメリカ軍が占領し
ている地域は危険である。バグダッドでは特にバース党の残党
が多く、反米感情が強い。

また、旧バース党員が逆に米占領下で迫害されることも多く、
彼らの間に不安が広がっている。現地ではここ数ヶ月の抵抗勢
力活動やテロはまだほんの序章にしかすぎないという見方が強
い。これからますますそういったテロ活動が活発化してくるだ
ろう。

汚職は日常生活のいたるところにはびこっている。ほぼ無法地
帯なため、店やタクシーなどは最低でも戦前の10%増し払わ
ないとサービスを提供しない。また、特に国境地帯で密輸商人
や麻薬売人など増え、治安が悪化している。

<アメリカの戦略と展望>
イラク政権打倒はブッシュ政権発足以来の目標であり、イラク
戦争はアラブ世界(とその石油)をアメリカの支配下に置くと
いう長期的目標達成の為の一段階でしかなかった。

が、ここにきてその展望に陰りがみえてきた。莫大な資金投入
にもかかわらず、イラク情勢は泥沼になりかえってテロの温床
をつくりだしてしまったことや、アラブ世界の反感を買ってし
まった事、また国内での支持率の低下などから、アメリカは今
戦略の転換をせまられている。
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▼やっぱり方針の転換を迫られているんだねえ。ふと、“素”
で思ったのだが、言葉は悪いが、ブッシュ政権は何故こんなに
「ヤヤコシイ場所」を侵略・統治しようとしているのだろう。
なにが理由なんだろう。石油がそんなに大事なのか。それだけ
なのか。ぼくには、どうもそうとは思われないのだ。でも、そ
うなのかなあ。根本的な軽蔑とか、嫌悪とか、征服欲とか、擦
れ違いとか、そういうのもあるんじゃなかろうか。


【めでぃあ・オフノート】

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イラクに出兵している欧米メディアは、「テロ」ではなく
「レジスタンス」(抵抗)と報道し始めている。

(東京新聞2004年2月5日付、宮崎学「本音のコラム」)
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▼「抵抗かテロか」と題されたこのコラムを書いた宮崎学氏は
、最近『警察官の犯罪白書』という力作を発刊していて、これ
は実は鋭いマスメディア批判でもあって、いずれ取り上げよう
と思っている。

それはさておき、欧米メディアがイラクでの「テロ」を「レジ
スタンス」と報道しはじめているという。これに引っ掛かって
紹介する次第だ。

▼上記の文章を書くにあたって氏は、「2月2日、北海道旭川
に自衛隊本隊の出発を見るべく向かった。自分の目と耳で海外
派兵の「気分」を確認したかったからだ」。

▼テロか、レジスタンスか。これは、ぼくもここ数ヶ月ぼんや
りと考えているテーマで、何が違いなのか、ちゃんと腑分けし
ないといけないと思っていたところだった。宮崎氏はベトナム
戦争を通して、こう続ける。


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私には一つの疑問があった。イラク戦争を「民主主義擁護連合
軍」対「イスラムのテロ軍」と規定したら、間違いをことにな
るのではないか、という疑問である。その答えを旭川で得たか
った。

十九世紀以降、列強先進国にあらがう側は「テロ」として描か
れてきた。一九六〇年代の南ベトナム解放民族戦線を米国は「
テロ組織」「共産ゲリラ」としていた。六八年、旧サイゴンの
米国大使館突入を強行した解放民族戦線などは、まさしく「自
爆」的行為であった。

しかし、「自爆」を現象的にとらえて「テロ」とするのは、そ
の後のベトナム戦争の歴史が示すとおり、誤りである。イラク
での「テロ」側を平面的、図式的に規定し、それを根拠に対応
すると、歴史を誤ることになりはしないか。
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▼レジスタンスにとっての宗教と、現代テロリスト(“現代”
とつけたのは、たとえば難波大助と安重根とモハメド・アタを
同じ意味のテロリストとして列することに違和感を覚えるから
だが)にとっての宗教との違い。

政治と宗教。政治“の”宗教。宗教者にとっての政治。政治家
にとっての宗教。宗教としての政治。政治としての宗教。

「絶望的な存在証明」(加藤周一)としてのテロを起こす人と
、起こさせる人との違い。

ごちゃごちゃと考えてしまうが、荒っぽく言ってしまうと、テ
ロとレジスタンスとの違いは、「いのちに対する感覚」の違い
かな、と思う。その感覚の違いが、政治や宗教のかたちをとっ
て、あらわれているように感じる。

同胞の絶望をすら利用する惨心――ここに問題の核心の一つが
ある、と考えている。


▼リンク情報を2つ。

▼岐阜での加藤周一氏の講演会の内容
「自衛隊派遣は孤立の道 加藤周一講演会に700人」
http://www.usiwakamaru.or.jp/~gifkyoso/top/information/kumiai/2004/02/0207_2.htm

▼バグダッドに住んでいる女性の文章の日本語訳
Baghdad Burning
バグダードバーニング by リバーベンド
http://www.geocities.jp/riverbendblog/


【転載】
神浦元彰(軍事アナリスト)の「J−RCOM」
〜激動する世界の最新軍事情報を発信〜
http://www.kamiura.com/new.html
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■タイトル
サマワ部族長 日本に招待 
政府、4月第一陣 陸自に協力期待 
(読売 2月16日 夕刊)

■要約
政府はサマワ周辺の部族長を日本に招く計画を進めている。は
やければ4月にも第一陣が来日する予定である。サマワ周辺に
は40の部族がおり、世襲制の部族長が絶対的な影響力をもっ
ている。この部族長を日本に招くことで、自衛隊の活動を円滑
にしたいという狙いがある。

■コメント
いかにも日本政府の考えそうなことである。これもいわゆる接
待外交の一つと思っているのだろう。お金はあるがアイデアが
ない。ヘタな芝居のシナリオを読んでいるような気持ちである


この例で思い出したのは、映画「地獄の黙示録」でカール大佐
が告白するシーンだ。米軍のグリーンベレーがベトナムの山岳
部族の子どもに種痘の注射を行う。すると山岳部族は注射をし
たこどもの片腕をすべて切り落とした。翌日、グリーンベレー
が再び村に入ると、村の空き地には、切り落とされた子どもの
腕が積み上げられていたというセリフである。ここで配慮しな
ければいけないのは我々とイラク人は文化が違うことだ。

このような部族長を日本観光に呼ぶと、最初は部族長たちは感
激して日本政府に感謝するだろう。

しかしテロリストにとっては格好の暗殺リストになる。

帰国後、次々と日本に招待された部族長が殺されれば、感謝は
怒りにかわるだろう。すでにシーア派の聖地ナジャフでは、聖
職者が自爆テロで多くの信者と共に殺された。部族長を暗殺す
ることなど、アルカイダにとって難しいことではない。

必ず、サマワの部族長を日本観光に招待する計画がでて来ると
思っていた。愚かなことである。恐れていたことが現実となる
。日本政府はイラク人の羨望ではなく、尊敬を得られるように
努力すべきなのだ。
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竹山 徹朗
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