わがメーリング・リストからの引用 (7)
ある決意 / ある雑誌の創刊の辞 (2002.11.20) 創刊のことば 歴史学者J・E・アクトンの有名なことば「権力は腐敗 する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」に象徴されますよ うに、権力の腐敗がほとんど法則的であることを前提とし て、近代の国家は腐敗を構造的に防ぐ手段たる「三権分 立」を創出しました。しかしこの三権はいずれも国家権力 に属するために、しばしば癒着あるいは独裁化に陥りやす い現象がみられます。 この「癒着あるいは独裁化」を監視して未然に防ぐため の最も有効な働きを示してきたのがジャーナリズムです。 腐敗しつつある権力は、国民に「知られる」ことをまず最 もおそれます。知られなければ国民の怒りも起きようがな いはずなのですから。したがってジャーナリズムは、国家 権力としての「三権」からは全く独立した市民のものでな ければならず、そこに俗称「第四権力」たる意味も役割も あるわけです。民主主義社会にとって健全なジャーナリズ ムが必須条件でもあるゆえんでしょう。 しかしながら、そのような第四権力としてのジャーナリ ズムも、国民の間に信頼がなければ影響力はありません。 一般的に週刊誌の信頼度が過去に高くなかったのは、セン セーショナリズムや羊頭狗肉・エログロ・プライバシー暴 露に走りすぎ、正確性や取材倫理・批判精神・報道対象な どの点で真のジャーナリズムからかけ離れていたからでし ょう。 ジャーナリズムが国民の信頼を失うもう一つの大きな原 因に、国家権力との癒着あるいは国家権力の広報機関化が あります。三権を監視する役割のはずが、三権の補完物と 化しているのでは、第四権力としての存在理由もなくなっ てしまいます。 日本敗戦からまもなく50年。日本列島はゴルフ場などで 環境破壊がすすみ、去年は日本軍(自衛隊)の海外派兵が 強行され、金権政治の腐敗構造も極点に達していることが 国民の前に明らかになりました。この重大な時期に、日本 のジャーナリズムははたして第四権力の名に恥じぬ役割を つとめているのでしょうか。 久野收・本誌編集委員(故人)