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わがメーリング・リストからの引用 (9)



R,クラーク米国元司法長官の国連安保理宛書簡の日本語訳 /  (2003.01.20)



この文章は、R.クラーク米国元司法長官が、2002年9月 20日国連あてに送った公開書簡の本文を日本語訳したもので す。前半は永添さん、川嶋さんに、後半は萩谷良さんに訳出し ていただきました。とくに萩谷さんには、全体を通し誤読や誤 解などをていねいにご指摘いただきました。ご協力いただいた 方々にこころから感謝申しあげます。 また、R.クラーク氏のこの文章は、今イラク攻撃を阻止する 上で重要な内容を多数含んでいます。趣旨にご賛同された上で の転載は自由です。ただし、必ず本注記を同時に添付していた だきますようお願いいたします。
R.クラーク氏 国連安保理への公開書簡本文日本語訳 【Ramsey Clark Open Letter To UN Security Council】 2002年9月20日 1.ジョージ・ブッシュは、イラク攻撃と政権転換を決意して 大統領になった ジョージ・ブッシュは、彼の戦争を止められることなく即座に 行うため、速やかに行動している。彼は先週金曜日の演説で( 訳注:2002年9月13日)、イラクが国連の査察を受け入 れるとは信じないと発言した。 ブッシュは、イラクが即座に無条件で査察を受け入れると信じ るのは「まやかしの希望」であり、国連が行動を起こさないな ら、アメリカ単独でも攻撃をすると約束した。ブッシュは、イ ラクと戦争し、力づくで彼の傀儡を立てイラクを支配させたい という欲望にとりつかれている。 国連においてこれまでに行われた最も好戦的な演説(これは国 連憲章、法の支配および平和の希求に対する先例のない攻撃だ )の数日後、アメリカは、過去11年言ってきたイラク国内の 標的を、毎日不法にイラク領空を侵犯していたアメリカ機への 脅威や攻撃に対する報復から別のものに変更すると発表した。 アメリカの航空機が1度も攻撃されていないというのに、その 脅威がどれだけ深刻なのだろうか。一方、何百ものイラクの人 々が、いわゆる「飛行禁止空域」だけでなくバクダッドの市中 においても、アメリカのミサイルや爆弾で殺されたのである。 今やアメリカは、イラク侵略の準備として、イラク国内の主要 な軍事施設を破壊する意向を宣言している。これは明らかな攻 撃の約束である。 毎日、ジョージ・ブッシュの戦争への猪突猛進に抵抗する勢力 を打ち負かす為に、脅迫とプロパガンダが仕掛けられる。もし 非暴力の説得工作が成功しなければ、このような戦争への加速 は、戦車が走り出すまで止まらないだろう。 2.ジョージ・ブッシュは、終わりなき戦争という無法の世界 へと、米国を導き、国連とすべての国を拉致する ジョージ・ブッシュは、彼の「テロリズムとの戦い」において 、どんな国、組織、人々に対しても、警告なく、自分だけの裁 量で、攻撃を仕掛ける権利を主張してきた。 彼と彼の政府の高官は、政府による攻撃や人民への抑圧に対し て法が課そうとしてきた古くからの制約は、もはや国家安全保 障と一致しないと宣言した。テロリズムは危険なのだから、米 国は必要に迫られてやむをえず、先制攻撃をかけて外国からの テロ活動の可能性を潰し、外国、米国内をとわず人々に対する 恣意的な逮捕、拘留、尋問、管理、処遇を行うのだ彼らは言う 。 法は公共の安全の敵となった。「必要性とは独裁者の理屈」。 「必要性がまともな取り引きをしたためしはない」 ナチスのゲシュタポ長官だったハインリヒ・ヒムラーの「まず 射て、尋ねるのは後。そうすればお前を守ってやろう」という 言葉は、ジョージ・ブッシュによって正しさが証明されている 。 ホルヘ・ルイス・ボルヘスが「ドイツレクイエム」の中で描写 したドイツのように、ジョージ・ブッシュは今や、剣への信仰 と暴力を全世界に提供している。そしてボルヘスが書いている ように、剣への信仰にとって、ドイツが敗れたことなど問題で はないのだ。 「大事なのは、暴力が……今や支配するということだ。」。 ドイツ人は、二世代にわたってこの信仰を拒んできた。ドイツ 人が平和の追求において示した粘り強さは、あらゆる国で、次 世代からの尊敬を勝ち得るだろう。 国連加盟国の国民は、ジョージ・ブッシュのテロリズムとの戦 い及びイラク侵略の決意によって、国際法と人権擁護の終焉の 危機にさらされている。 ジョージ・ブッシュが「テロリズムとの戦い」を宣言して以来 、他の国々も先制攻撃の権利を主張している。インドとパキス タンは、地球と彼ら自身の国民を、1962年の10月(訳注 :キューバ危機)以来のどのときよりも核戦争の危機へと近づ けた。 これは、アメリカが、一方的な決定にもとづき、国連に諮るこ となく、審理もなく、あるいは、攻撃目標はテロリストであっ て、彼らだけに限定されるのだという主張になんら事実にもと づく明らかな根拠を示さすことなく、テロリストを追跡して殺 し、あるいは彼らをかくまう国を攻撃する無制限の権利を主張 したことの直接の結果である。 テロリズムとの戦いにおけるジョージ・ブッシュの力の主張を 根拠に、他国を攻撃したり、自国の人々の人権に対する侵害を 強めることは、今や多くの国に蔓延しているといっていい。メ アリー・ロビンソンは国連人権高等弁務官としての任期終了時 の、静かな勇気にみちた演説の中で、アメリカの先制攻撃権と 基本的人権保護中止権の主張がもとうとしている「波及効果」 について語っている。 2002年9月11日、アメリカの強力な保護を受けているコ ロンビア新政権は、「逮捕令状なしに容疑者を逮捕し、諸地区 を軍の管理下に置く権限を主張した」。 それには「電話の盗聴や、紛争区域への外国人の立ち入り制限 を容易にし、・・・治安警察官が疑わしいと思えば、一日中い つでも、人の家やオフィスに、捜査令状なく入ることを許す新 たな権限」が含まれる。これら新たな人権侵害は、人口400 0万の国に100万の密告者の組織を作る、9月11日以後に 立てられた「緊急事態」計画に従ったものなのである。200 2年の9月12日のニューヨークタイムズA7面を参照してい ただきたい。 続く