■演習I・II・III(人間表現領域)


テーマ:人間の心と身近な環境

 人間が生まれ成長し「心」を形成していく過程で、発達段階の環境が大きく影響します。本年は、人間の心の形成と環境との相互作用を研究テーマとしています。
 特に臨床的問題を抱えている若者を自然環境の中でケアしていくことは、心の環境浄化に関して大きな効果があります。具体的には、生きる意味を喪失した人々、人生の挫折を経験した若者、そして心の不安定な子供たちに対して、自然環境の中で「環境教育」を通じて、健全な心の環境を培っていくことを試みたく思います。
 さらに、家や地域の環境を、視覚・聴覚・嗅覚・触覚など五感を通じた快適な環境として把握する試みも行います。例えば、色彩やフラワーアレンジメントなど、自然環境を部屋に復元する試みや、さらに広野環境教育野外施設で児童保育の指導も行います。



ゼミの講義風景




広野環境教育施設にて甲南小学校の
子どもに苗付けの指導にあたるゼミ生


 また、ゼミ活動として2001年度から継続して、「甲南大学における循環型コミュニティの創造」をテーマに、活動を行なっています。学内においてはゴミの4分別化の実施(2001年)、摂津祭(学園祭)におけるリサイクル活動の推進・普及活動(5回)、環境啓発シンポジウム(計5回)の開催などを行なっています。学外においては、甲南大学環境教育野外施設(広野)での自給自足生活の体験学習や野菜・米作り、また学生レベルでの際パートナーシップの構築(タイ・中国・カナダ)などを行なっています。


■主な卒業論文テーマ

  • 学校教育における自然体験の意義−臨床教育の視点から−
  • 弓道における精神性−「礼」「無心」「道」の概念を手がかりとして−
  • 心身相関を基盤にした「健康」をめぐって
  • 豊かな心を育成するための環境教育−学校教育の視点から−


■大学院:人文科学研究科人間科学専攻(環境・芸術・思想分野)

 人文科学研究科人間科学専攻(環境分野)では、応用哲学(環境倫理・生命倫理)、環境学、環境教育学を専門的に取り組みます。現代思想の大きな領域を占める「環境思想」について考察します。そのために,環境学と環境教育学の原理論について研究し、地球環境問題を環境学の総合的視点から検討します。
 また,地球環境問題の解決のための予防的な取り組みとして環境教育学について、研究します。内面的に心豊かな子どもを育てるとともに、外面的に循環型社会を実現する実行力のある子どもを育てることを目的としています。そこで「環境教育学」は、心の環境を健全なものにする理論的枠組みを与えるとともに、実践的な問題解決能力を培う臨床教育の哲学という観点から研究します。
  • 環境に関する古典の文献研究
  • フィールドワーク体験の研究
  • 論文指導

■主な修士論文テーマ

  • 道徳判断における形式性と実質性に関する考察−義務論と功利主義の接点を求めて−
  • 生涯発達における環境教育の意義−心理‐社会的発達の環境をめぐって
  • 「ルソーの個性尊重教育」を基盤とした「生きる力」について−デューイの「実験学校」を手がかりに−
  • A.ネスのエコソフィの自己実現を通じた環境認識の展開−W.ジェイムズのプラグマティズムを手がかりに−


■ゼミナール研修合宿/海外研修旅行


 毎年、大学の夏期及び春期休暇を利用して研修旅行を行なっています。地球環境問題を講義の中で学ぶだけでなく、実際に現地を訪れることによって、理解を深めるます。これまでに、公害病の原点である水俣病を調査するため熊本県の水俣を訪問、また奇形ザル問題では淡路島や小豆島、日本モンキーセンターなどに調査にいきました。また最近では、国際的な環境問題を調べるため、中国・カナダ・タイ・マレーシアを訪問し、北京大学(中国)、ヴィクトリア大学(カナダ)、プラナコーン=ラジャバト大学(タイ)、マラヤ大学(マレーシア)の環境学部や環境教育センターなどを通じて、学術研究交流・国際交流を行なっています。



夏期ゼミ合宿にて(1992年8月);熊本県
水俣市に調査 乙女塚、熊本大学、ガイ
ア水俣、水俣病センター想思社などを
研修




夏期研修旅行にて(1997年8月):北京大
学キャンパスにて
環境教育研究室教授の田徳祥先生とそ
の学生とともに



夏期研修旅行にて(1999年8月);日中
環境教育情報交流第一回シンポジウム
(於北京大学)を終えた後、内モンゴルへ
エコツアー




夏期研修旅行にて(2003年7月);カナダ・
ヴィクトリア大学環境学部 フィールドコー
ス「環境哲学と民族植物学」(担当:Nancy
J. TURNER教授/谷口文章教授)に参加




春期研修旅行にて(2005年3月);タイ 
Pran Buri 森林公園でマングローブ林の
ネイチャートレイルを見学





春期研修旅行にて(2006年3月);中国・
万里の長城にて 翌日、北京大学環境教
育センターにて講義・学生交流を行なった




夏期研修旅行(2006年8月);タイ・バンコクにて第5回国際保健医療行動科学会議(於:プラナコーン=ラジャバト大学)終了後、エコツアーにてクイブリ国立公園へ行き、野性の象の調査を行なった


■研究室活動報告書について


研究室活動・ゼミナール活動については、毎年、研究室活動報告書を作成しています。

研究室活動報告書



■フィールド活動


 食品汚染の問題、食糧問題への対応や持続可能な社会の構築の問題に向き合いながら、中間技術に根づいた伝統的な農業の方法について学んでいます。甲南大学広野環境教育施設にて、実地に有機農業による米づくり・野菜づくりを体験する環境教育の実習授業や研修会などをおこなっています。



広域副専攻科目環境学コース「環境教育
の実践」の講義で田植えの指導にあたる
ゼミ生  @広野環境教育野外施設



兵庫県教育委員会主催「10年教育者経
験者研修」にてカナダ・ファーストネーショ
ンの伝統的な料理方法ピットクッキングを
応用した実習  @広野環境教育野外施設


■学協会における研究活動・国際学術交流など


 日本環境教育学会、日本環境教育学会関西支部、日本保健医療行動科学会、日本保健医療行動科学会近畿支部、関西倫理学会等の学会活動に参加し、国際会議、研究大会、支部大会の開催・参加、ワークショップそして研修会などの実施、研究発表などをおこないます。また、研究室が運営する「地球環境と世界市民」国際協会、日中環境教育交流協会などの活動を通して、国際的な学術研究交流も推進しています。また最近では、e-Learning(TV会議システム)による遠隔授業を展開しています。



北京大学創立100周年記念国際会議
「環境科学と持続的発展」(1998年5月)
において記念講演で招聘された。また、
北京大学客員教授(終身)に就任





第11回環日本海環境協力会議(2002年
12月 於:中国海南島主催:環境省)にて
講演




第5回国際保健医療行動科学会議「健康
と環境をめぐる教育」(2006年8月 於:タイ・
プラナコーン=ラジャバト大学)を開催し、
基調講演を行なった。ゼミ生もスタッフとし
て参加





TV会議システムを使用したe-Learning の
デモンストレーション タイ・プラナコーン大
学から国土交通省近畿地方整備局国営明
石海峡公園事務所をつなぎ、環境教育の
情報コンテンツを紹介する



■その他活動記録