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CLUB IRREGULARS

Vol.0002★14/05/1996

*Back Issue Vol.0001


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Vol.2
第二回
Ishi no ue nimo hi no youjin

石の上にも火の用心

高杉弾
                               前略。
                               爽やかな秋の風がわたしの頬を吹き抜ける
                            きょうこの頃、飛ぶ鳥は落とされる不安を小
                            さな胸に抱きながらも遥かなる大空を翔けめ
                            ぐり、うつろいゆく季節の中にその思いをは
                            せています。
                             釣った魚は餌を食べ、石の上に三年住んだ
                            天才は忘れた頃に木からころげ落ちました。
                             早いものでわたしももう六十四歳、陰毛の
                            白髪も二本や三本や四本ではありません。
                             話が後先になりましたが、先日は大変結構
                            な石の佃煮を頂きましてまことに有難うござ
                            いました。なにしろ石の佃煮はわたし共の大
                            好物とありまして、女房ともども大変美味し
                            く頂きましたことでした。
                             ところで先日の書状の件ですが、不肖わた
                            くし当世の流行事につきましては皆目目が不
                            自由の有様にて、画壇文壇その他諸々なる芸
                            術界隈にてはこれ即ち子供の散歩の如き不案
                            内の呈にて、塀の向うに婦女子の入浴せんと
                            する気配あらば節穴より覗きてあわよくば千
                            擦りの一つもこき倒さんとの願い多く、道端
                            に忘れ去られたるハンドバックあらば周囲に
                            人の気配を伺いこれなくば早速家に持ち帰り
                            て中身をあらため金目の物あらば着服せんと
                            て願いけむ。鳴呼よるべなきかな我が心。
                             まったくもって貴兄の希望これ愚才たるわ
                            たくしに為せるべき業にあらず。能わざるこ
                            と馬の如く、叶わざること猿の如し。
                             馬鹿は休み休み云いたるも、年中休みのわ
                            たしには一体なんのことやらわかりません。
                             食べたい時は食うが良く、疲れた時は寝る
                            が良い。起きて働く馬鹿もいる。鳴呼世間広
                            しと云えども波高し、赤貧を洗ってみれば我
                            が子なり。
                             耄碌爺いと罵られ、時計を仰げばもう六時。
                             鳴呼南極の雪は白勝った。かつて越冬隊員
                            は南極Z号なる人工美人を同伴せしとのこと
                            なれど、わたしには一体なんのことやらわか
                            りません。
                             八時になったら全員集合、馬番はばんばん
                            万馬券、あーあ馬番はばんばん万馬券、隠喩
                            だな、ははん隠喩だな、お湯が天井からぽた
                            りと背中に、冷てえな、あああん冷てえな、
                            落ちて転げるジャイアント馬番、なんちゃっ
                            て。競馬とは当たらぬ物と見たり枯れ尾花。
                               とは云うものの、たとえ隠喩だからと云っ
                            ていつまでも浸かっていてはレトリックにあ
                            たって死んでしまうかも知れません。小雪舞
                            い散る比喩の温泉もいいけれど、直喩に浸る
                            のはたいがいにしてそろそろご飯にしません
                            か? きょうのおかずは揶揄の塩焼きよ、な
                            んちゃって。
                             鳴呼なるほどそうか学会、これで納豆食う
                            ならば、理解認識合点承知、皆まで云うな分
                            っておるわ、ええいうるさい奴め鰻、手打ち
                            うどんにしてくれるなどと申しますが、わた
                            しには一体なんのことやらわかりません。
                             かつて「馬鹿ひげ」という文芸映画があり
                            ました。三船敏郎がものすごい馬鹿の医者で
                            おまけに共産主義者、加山雄三は右翼の出で
                            したが三船の馬鹿に感化されてマルクス主義
                            に溺れ、鎌とハンマーで患者の腹をさばいて
                            は敷布を真っ赤に染めておりました。
                             一方その頃、馬鹿ひげは貧乏こそ共産主義
                            者のあるべき姿と思い込み、なんとか貧乏に
                            なりたい貧乏になりたいと願えば願うほど何
                            故かどんどんお金が貯まってしまいます。鳴
                            呼もうどうしてこんなにお金があるの? 捨
                            てても捨てても貯まってしまうこのお金、い
                            っそ患者の腹の中に捨ててしまおうか黄金餅。
                             見る見るうちに小石川療養所は巨大なビル
                            となって今や総合病院。宝くじまで当たって
                            しまった馬鹿ひげは加山雄三と結婚して末長
                            く暮しました土佐の黒澤。
                             とまあこのような町の噂に感化され、感化
                            院に入れられてもう五年、「缶か瓶か」など
                            と云ってへらへら笑ってる場合ですよネエあ
                            なた。
                               親分の出所とあらばたとえ火の中水の中、
                            地獄の底までついて行きます妻だもの。あた
                            し、あなた好みの女になりたいなどと嘘も方
                            便、検便のうんこを徳用マッチの箱にいっぱ
                            い詰めて学校に通ったあの少年時代が懐かし
                            い。
                               要するに人生金ですよ金。あんたお金がな
                            くてどうやって生きてくの? お金が貰える
                            から仕事してるんでしょ? 誰が原稿料の出
                            ない原稿なんか書くもんですか。あたしゃ別
                            に芸術やってるわけじゃないんだよ。今どき
                            芸術だってお金で売り買いされるご時世です
                            よ。へへんだ。どんなに立派な理屈並べたっ
                            てね、世の中所詮は金ですよ金。お金より偉
                            い物なんかこの世の中に存在しませんよーだ。
                            あんたね、そこんところを思い違いしちゃあ
                            いけませんよってんだべらぼうめ。そういう
                            了見だからいつまでたったって嫁のきてがな
                            いんだよ。あたしゃあね、云いたかないけど
                            云いたいよ。あたしがのべつ口を酸っぱくし
                            て云ってるだろ? 世の中お金なんだよ、え
                            え熊さん。あんたとはもう長いつき合いだ。
                            こんなことは云わなくたってわかってると思
                            ってましたよ、ええ熊さん。どうなんだい?
                               てなことを申しましてお後がよろしいよう
                            で、どちら様も火の元にはくれぐれもご用心
                            のほどをお願い申し上げます。あ、火の用ぉ
                            心ん。

--この文章は月刊『ガロ』1991年12月号に掲載されたものです--



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