季刊「BURST HIGH」誌(コアマガジン社)で連載 OUT OF HIGH TIMES ★Vol.10★(最終回)

------------------------------------- 別の「OUT OF HIGH TIMES」に飛ぶ Jump to the Other Issue Vol.01/Vol.02/Vol.03 Vol.04/Vol.05/Vol.06 Vol.07/Vol.08/Vol.09 -------------------------------------
Sorry ! We have only Jappanese version, now. !!!!!!! We recommend Safari 15.1 or higher !!!!!!!
Here is not INTERNET!! Switch Off Quickly Now!! ここはインターネットではありません 急いで電源を切りなさい


第十回(最終回) Vol.10
論理と物理の狭間に生きる現代の障害者たちよ、 僕はいったい誰のエイリアスなのだろう 高杉弾 Takasugi Dan

            コンピューター障害と身体問題              パソコンに繋いでいる外付けハードディスクがいきなりクラッ             シュしてしまった。いきなりとはいっても、もちろんぼくの使い             方がいけなかったのだ。そんなことは知っている。しかし、わざ             わざクラッシュさせようとしてクラッシュしたわけではない。お             れに言わせれば、勝手にクラッシュしやがったのだ。              中には日常的に使っているいくつかのソフトウェアのほかに、             過去十五年間に渡って書いた雑誌用の原稿や単行本二冊分の原稿、             デジカメで撮った数千枚の写真、インターネットから集めた数百             枚の写真や画像、ホームページ用のHTML書類や図版など合計             約45ギガバイト分のデータが入っていた。              その膨大なデータのすべてが、一瞬にして消えてなくなったの             だ。もちろんこの連載の原稿も一回目から前回分まで、すべて消             えてしまった。              今回、前に書いたことと同じことを書いてしまうかも知れない             と思うと不安で不安で気が変になりそうだ。気が変になってしま             った人のことを世間ではキチガイといい、これは精神障害の一種             であるらしいが、「あいつはほんとうにキチガイだね」などと褒             め言葉のように使われたりもするから不思議である。              最近は痴呆症やボケ老人のことを「認知症」と言い換えること             になったらしいが、ぼくのハードディスクはパソコンが認知でき             ない症状になったわけで、正確にはクラッシュではなく「認知障             害」と言えそうだ。すなわち、ボケ老人は「認知症」ではなく             「認知障害者」あるいは「不認知症」と呼ばなければ意味が逆に             なってしまう。一刻も早く認知してもらいたいものだ。              とにかく目の前が真っ暗。急いでインターネットでハードディ             スクの復旧屋を探し、タクシーに乗って渋谷まで運んで行った。             目の前が真っ暗、つまり全盲。古い言葉で言えば●●●であるが、             目が暗いので●●●としか書けない。じつは、こないだ六本木の             タイ人バーで飲んでいるときに、ホステスのタイ人がおれの目の             前でお菓子のパッケージを破って開いた瞬間に右目に痛みを感じ、             まあたいした痛さではなかったから気にせず家に帰ってきた途端             に凄まじい激痛に見舞われ、左目も開けることができなくなって             疑似全盲状態を味わった。予期せぬ●●●である。              全盲すなわちすべてが●●、まったく何も見えない。右も●、             左も●、今の世の中右も左も真っ暗闇じゃござんせんかと歌った             のは片岡鶴太郎ではなく鶴田浩二だが、まったくその通りだと思             った。世の中すべてが●●だ。              家人に手を引かれてタクシーに乗り、近くの病院へ行ったのだ             が、もちろんどこの病院なのかさえもわからない。足を踏み出す             ことが怖くて姿勢が自然に前かがみになってしまう。箸がまった             く使えないばかりか、自分が何を食べているのかさえわからない             から食事はまるでダメで、おにぎりが一番食べやすかった。              手探りでトイレに行っても小便は勘で狙い撃ち、大便はウォシ             ュレットだったので助かった。もう「オ●●コ」どころの騒ぎで             はないのである。トイレで、自分の●●●がどれぐらい出たかも             わからないというのはじつに情けないものである。              幸いなことに、この全盲状態は丸二日間で脱することができ、             盲人の人の苦労が多少なりとも理解できた、ような気がした。              で、クラッシュしたと思われたハードディスクがどうなったか             というと、検査の結果、ぼくの予想通り物理的ではなく論理的な             障害だそうで、専門家の間では「認知障害」ではなく「論理障害」             と呼ぶのだそうだ。この場合はほとんどのファイルが復旧できる             という。ただし、すべてのファイル名を書き出したリストがなん             と2万8千行もあり、その中から復旧してほしいファイル名だけ             を残して他を消していく作業をしなければならない。そして、残             りのファイルを復旧するための費用は、なんと275500円だ             という。よくアメリカの若者みたいな人がイキナリ的に機関銃を             乱射したりして関係ない人たちを大勢殺したりしてるけど、ちょ             っとだけ気持ちがわかった、ような気がした。とにかく気が遠く             なるような作業だった。              しかしまあ考えてみれば、ぼくの肉体も物理障害だらけだ。い             や脳味噌の中は論理障害にやられているかも知れない。脳卒中と             かくも膜下出血は物理障害か。いま流行の鬱病は論理障害だろう             か。ハードディスクの論理障害は277500円で治ったけれど、             鬱病の論理障害は277500円じゃ復旧できないかも知れない。              ストレスというものが物理ではなく論理からくる症状だとした             ら、糖尿病もひょっとして論理障害なのではないだろうか。はや             く復旧してもらいたいものだ。             夢と現実と幻想と幻覚              睡眠から目が覚める直前に夢を見ていないと、目覚めた瞬間に             脳味噌がいま目に見えている回りの風景が自分の現実世界だとい             うことを認識するのに時間がかかる、ということに最近気づいた。              ぼくはよく夢を見る体質で、つまり眠りが浅いということだろ             う。普段は目が覚める直前まで夢を見ていて、目が覚めきってし             まうと夢の内容を忘れてしまうことが多い。              それがときどき、目覚める瞬間まで熟睡している日があって、             そういう時は目覚めた瞬間にもの凄くびっくりする。ふだん見慣             れているはずの自分のベッドの回りの風景がまるで知らない世界             の風景に見える。脳がぐるぐる回転して必死に認識しようとする             ので、それは5秒か10秒しか続かないわけだが、あれはなかなか             凄い体験だ。深い睡眠は現実の世界を忘れさせるのだろうか。昔、             LSDをやっていた頃によく似た体験をしたけれど、あれともち             ょっと違う気がする。              しかしまあ、ぼくたちが普段目覚めてから眠るまでの間に見て             いるこの現実世界が、ほんとうに現実だという保証などどこにも             ない。多くの学者や脳の研究者たちが、「〈現実〉というのは人             それぞれが見ている〈幻覚〉の別の言い方にしか過ぎない」と発             言している。「幻想が見させる幻覚こそが、まさに常識人と呼ば             れる人々の〈現実〉なのである」と言っている学者さえいる。             「うつし世は夢、夜の夢こそまこと」と言ったのは、隅田川乱一             ではなく、あの幻想怪奇探偵小説の帝王江戸川乱歩だった。              星新一のショートショートには、眠りについた瞬間から朝起き             て会社に行く夢を見はじめ、その夢は一日が終わって夜眠りにつ             く瞬間で終わって目が覚める、という恐ろしい作品がある。つま             り、彼の「現実」は夢でもあり同時に現実でもあるというわけだ。              夢であり現実でもあり、幻想であり幻覚でもあり、そのいずれ             でもありいずれでもない。              なにやらナーガルジュナの四句否定のような話だが、実際のと             ころ、夢と現実と幻想と幻覚は、本当にそれぞれ別々に成り立つ             概念なのだろうか。ああ、世の中はまるで世の外みたいじゃない             か。             iPodで写真やビデオが見られる              多くの障害に悩まされている今のぼくにとって、音楽はほとん             ど唯一の気安めだ。去年の秋に最初の一台を手に入れてから約一             年、ついに6台目のiPodを買ってしまった。バンコクのお店で             使っている5台や、友達にあげたのも入れると15台ぐらい買っ             ている。完全にアホだ。              今回買ったのは発売されたばかりの60ギガバイトのもので、             前のより少しだけ大きくなったカラー液晶画面に、写真やmpeg4             フォーマットのビデオを映すことができる。iTMSから一曲2ド             ルでダウンロードした音楽プロモーションビデオや、ビデオ対応             iPodの発売に合わせてさっそく出てきたエロ映像のポッドキャ             スト(インターネットで配信されるラジオやビデオ番組のこと)             を映して見ている。              しかし考えてみれば、もともと音楽の宣伝のために作られて、             テレビではタダで流されているプロモーションビデオをオンライ             ンで売るというのは妙な話だ。映像が良くできているにしても、             コマーシャルを買わされているようなものだから、一曲2ドル             (日本のiTMSでは三百円)は高いと思う。              一方、エロ映像の方は無料でハードコアを配信しているサイト             もあり、将来有料会員を獲得するための戦略だとしても、メディ             アの使い方としては納得がいく。「メディアはエロから」という             一時代前に暗記されたご託宣が、またぞろインターネットマスコ             ミを賑わわせている。まあそんな理屈はともかく、電車の中でフ             ェラチオやらファック映像やらを見られる時代になったことは間             違いのない事実だから、次に期待するのは電車の中でiPodを眺             めながらせんずりをこく若者やサラリーマンおやじの出現である             が、そんなことを期待してどうする、という声がすぐに聞こえて             くるのが民主的な健康志向社会のファシズム的な不健康社会を物             語っている、と思う。              禁煙運動がヒステリックなまでに浸透してきているのも不健康             社会の末期的な症状で、これが更に高じていくと、喫煙者を悪の             枢軸と見なしはじめる。「タバコを吸う奴は金正日と同じ」とい             うわけだ。金正日がタバコを吸っている映像は見たことがないが、             北朝鮮から日本に復帰したジェンキンズさんのタバコの吸い方は             カッコ良かった。禁煙運動の人たちはジェンキンズさんを禁煙ポ             スターに起用した方がいい、と思う。              とかなんとか言っているうちに枚数が尽きた。続きはまた次号             で。              (この連載は諸般の事情によりこの回で終了しました)


今回の作文が面白かった人はココを1 回だけクリックしてください ↓
Thanks!
ファンレターはこちらへ! *Mail to Takasugi Dan & iMi/imperialMEDIAMANinternational

ここはインターネットではありません 急いで電源を切りなさい

Now, you can jump to 《JWEbB》's Mondo Page Click*

*Up Date On MEDIAMAN *Takasugi Dan's Hong Kong Guide *Takasugi Dan's Koh Samui Life *Takasugi Dan's Treasure Box *Wabi Sabi Stereo Photo House *Merchandises *About of Takasugi Dan *The True Things of JAPAN


わかったから、とにかくお金を振り込め!! 送金先 住友銀行・目黒支店・普通口座・0711926・タカスギダン 早い者勝ちだぞ!

というようなわけで・・・
And, you can back to 《JWEbB》's Main Page ふりだしに戻る *Main Page

Presented by Takasugi Dan & iMi/imperialMEDIAMANinternational Tokyo/Japan , Bangkok/Thailand